【日本語教員試験】TBLTとは?タスク中心の授業の作り方を知ろう

【日本語教員試験】TBLTとは?タスク中心の授業の作り方を知ろう

TBLT(Task-Based Language Teaching)は、文法や文型の習得そのものではなく、日本語を使って具体的な課題を達成することを重視する教授法です。本記事では、TBLTの基本的な考え方、TSLTとの違い、授業の流れ、教師の役割、評価方法について具体例を交えて解説します。さらに、日本語教員試験で想定される出題形式や、試験対策で押さえておきたい関連用語も紹介します。

目次


TBLT(Task-based language teaching)とは?

TBLTは「Task-Based Language Teaching」の略で、日本語では「タスクベース・タスク中心の言語教育法」や「課題遂行型の教育法」などと言われます。従来のような文型中心ではなく実践を通して学ぼうという考え方で、実際の言語の使用場面を想定したさまざまな言語活動(「タスク」と言います)を行い、相手に伝えるために試行錯誤をし、講師や周りの学習者からフィードバックをもらいながら取り組む過程を通して言語を習得していく方法です。

文法積み上げ型のアプローチでは「可能形」「条件形」「○○構文の使い方」といった、学習すべき文法・文型が先に設定されており、知識を学んだあとでそれを使う会話練習を行うのが一般的です。しかしTBLTでは、必ずしもこうした順番に沿って学習をするわけではありません。文型の習得を目的に据えるのではなく、「その言語を使って○○をする」という目的のある「タスク」を達成することが目標です。意図を伝え合うことに重きが置かれるため、初めから正確に語彙や文法を使うことは重視されません。

  • TBLTの指導法

TBLTでは、「今日は○○という文型を学習しましょう」などの導入は行いません。代わりに、「自己紹介をする」「お店で注文をする」「道を聞く」「ミスを謝罪する」「スケジュール調整の依頼をする」などのタスクが設定されます。学習言語を使って具体的な言語活動をおこなうことで、「この時はどう言えばいいんだろう」という疑問が生まれます。タスクを通してなんと言えばいいかわからなかったり躓いたりしたことを、他の学習者と一緒に考えたり教師からのフィードバックを受けたりして「なるほど、こういう言い方があるのか!」「この使い方は違うのか!」と理解し、学習者自らが気づきを得て、活動の中で語彙や文法、必要な表現を身に着けていくという流れです。

教師の側も、文法積み上げ型とは異なるアプローチが求められます。TBLTにおける「教師」とは、前に立って知識を教える人というよりは「学習者の活動を観察し、学習者自身のタスクへの取り組みや気づきを促すファシリテーター」のような役割です。

カリキュラムを組む場合も、簡単な語彙文法から徐々に難度の高いものへとレベルを上げていく文法中心のアプローチとは違い、学習者の学習目的に合わせてどんなことができるようになる必要があるのか」を洗い出し、「できるようになるべき言語行動」をリスト化して授業で扱うタスクを決め、その場面に必要な語彙文型を抽出する、という流れでカリキュラムを組みます。

「どんなことができるようになるのか」という言葉を聞いてピンときた方もいるかもしれませんが、この「学習言語を使って何ができるか」を中心に言語能力を考える考え方は、まさにCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)や文化庁の「日本語教育の参照枠」で採用されている「Can-do statement」とも共通しています。

現在言語教育の分野では、「従来のような理論重視の学習ではなく、実用的でコミュニケーションに特化した言語教育を進めよう」という流れがあり、タスクベース型を採用するケースが増えています。TBLTが注目されているのは、こうした教育的トレンドの影響もあるのですね。

  • TBLTとTSLT

TBLT(タスクベース型)は既にある程度の学習歴があったり、実際にその国に住んで第二言語として学んでいる学習者にとっては実生活と結びついた形で実践ができるため、普段の生活でも実用性を感じやすいです。しかし、日常的に学習言語に触れる機会がなくインプットが少ない学習者や、文法もしっかり学びたいという学習者にとっては「理屈が分からないのになんとなく話している気がする・・・」「やはりしっかり説明してもらえないと、勉強している手ごたえがない」と感じ、十分に効果が得られない場合もあります。また、進学や就職などで試験が必要な学習者にとっては、進路に必要な知識が十分に身につかないというデメリットもあります。

そうしたケースでは完全なタスクベース型ではなく、語彙文法の学習も取り入れたTSLTという教育法が有効です。TSLTTask-Supported Language Teaching(タスク支援型言語指導)」で、TBLTのタスク学習と文法積み上げ型のような練習形態の両方を混ぜた学習法です。タスクに必要な語彙文法・文型を明示的に練習しつつ実践に取り組めるため、言語知識の面もカバーすることができます。

どちらがより学習者のニーズや目的に合うかを考慮し、適切な方法を採用することが重要です。

 

TBLTの活動の流れ

TBLTの方法に沿った授業はどのように組み立てるのでしょうか。

TBLT(タスクベース型)の授業の一例

1. プレタスクを行う

これからするメインタスクを理解させる目的で行う事前活動です。簡単な会話例を聞いてその場面について考えたり、「○○の場面で困ったことはありますか」「自分の国と日本とで、○○の仕方に違いはありますか」「○○についてどう思いますか」などの質問について自由に話すなどの活動を行います。このプレタスクを通して、メインタスクに向けて既知の知識を活性化したり、心の準備をしたりします。

2.  メインタスクの実践(ロールプレイなど)

ペアやグループでタスクを行います。教師は学習者のタスクの実践を観察し(クラスの場合は机間巡視などをおこなう)、適宜質問対応などをします。

3.  ポストタスク

メインタスクでよくできたところや上手くできなかったところ、言い方が分からなかったところなどを学習者同士で考えてもらい、教師からもフィードバックを行います。タスクで使っていた表現を取り出して確認し、語彙文法の意味や使い方の定着を図ります。間違えていたところの指摘や、ほかの言い方の紹介なども行います。

4.  学習者自身による自己評価と振り返り

まとめとして、「何が」「どのように」「どれくらい」できたかという視点で各自自己評価を行います。講師はタスクで目標としていたcan-do statementの達成度を振り返れるような自己評価シートなどを用意しておくとよいでしょう。(教材によってはcando振り返りシートが付属しているものもあります)

5.  講師のまとめ

その日のクラス全体を総括して授業終了。

タスクにはいろいろなものがあり、自己紹介をするなどの基本的なものから、職場で質問をする、謝罪をする、上司に報告をするといった相手との交渉的なやりとり、学習者同士で旅行の予定を立てるなどの相談が必要な共同作業、時事問題についてのディスカッションなどの高度なものまで様々です。

学習者の学習目的やレベルに応じて、いろいろなタスクを設定できます。

\お得な期間限定キャンペーン実施中!短期合格を目指す方は今すぐチェック/

日本語教員試験対策は「合格パック」詳細はこちら

 

教師の役割とは?

先にも触れたとおり、TBLTの授業における教師は、一方的に知識を与えるのではなく、学習者自身の学びや気づきを促すファシリテーターや伴走者のような役割です。

TBLTでは文型そのものを指導するのではなく、まずは学習者自身にタスクに取り組んでもらい、そこで必要な足場架けやフィードバックなどの介入を行うことが重要です。

誤用の修正を行う場合も、活動の中で必要な場面が出てきた際に手助けをするという形で行います。このように活動を行いながら必要に応じて言語形式にも注目させるような方法を「フォーカス・オン・フォーム」と言います。(※文法形式に注目させる「フォーカス・オン・フォームズ」とは異なります。)

誤用の修正はタスクの流れを邪魔しないよう、タスクの途中やタスクの後に適切なタイミングで行います。その際教師は、学習者に気づきを与えるようなフィードバックの仕方を心がけます。

例)

学習者「トイレ行くほしいです。」

教師「ああ、トイレに行きたいですね。」

教師がすぐに言い換えることによって、暗示的にフィードバックを行っています。


学習者「貸してお願いします」

教師「貸します、お願いします、いっしょに使いません。『お願いします』のときは、貸して・・・何と言いますか。」

学習者「貸し・・ください?」

教師「そうですね、あとひとつ、『貸し・・・』?」

学習者「貸し『て』ですか」

教師「そうですね!『貸してください』がいいですね」

こちらはすぐに答えを言うのではなく、学習者自身が知っている表現から考えさせる足場架け(スキャフォールディング)です。

・TBLTにおける評価の仕方

ここで一つTBLTのポイントとして、評価と振り返りについて触れておきます。

タスク学習のようにコミュニケーションに焦点を当てた活動では、文法や漢字の筆記試験とは違い、あまり明確な正解というものがありません。ある発話が正解かどうかというのは聞き手の受け取り方や理解度、歩み寄りによっても変わるため、何をもって「タスクを達成できた」とするのかの基準判断が難しいのです。

例えばレストランなどでお手洗いを借りたいことを伝える場合、どのような言い方が考えられるでしょうか。

「あのう、トイレ、使います、ほしい、いいですか」と言っても「すみません、お手洗いをお借りしてもよろしいですか」と言っても「トイレに行きたい」ということは伝わりますから、達成・不達成で言えばどちらも「達成」しています。

ただ前者の場合は意思疎通のためには聞き手の類推や歩み寄りが必要なため、正確さ(間違いの少なさ)や適切さ(相手や場面に合っているか)などの観点から見れば、後者の方がより円滑なコミュニケーションが達成できていると言えます。

このようなことから、TBLTなどのタスク学習では「何を」「どのように」「どのような語彙表現を使って」「どの程度」できたのか、という質的な評価基準を設けます。たとでば、「正確性(どれくらい語彙文法などの間違いがあるか)」「適切さ(相手や場面にあった話し方ができるか)」「語彙や文法の使用が適切か」「使用している語彙文法のレベルはどうか」「発音や抑揚などの聞きやすさ」「流暢さ(止まらずに適切なスピードで話せるか)」などの指標を設定し、それぞれを合わせて総合的に判断します。こうすることで、数字での判断が難しいコミュニケーションを立体的に測ることができるのです。

教師としてこのようなコースを設計する場合は、設計時の目標とタスクの内容、そして評価基準が一貫性を持つように設計する必要があるため、より高度なスキルが求められるのです。

\お得な期間限定キャンペーン実施中!短期合格を目指す方は今すぐチェック/

 日本語教員試験対策は「合格パック」詳細はこちら

日本語教員試験の出題方法とは?

TBLTの日本語教員試験における出題方法としては、まず5つの分野の中で「言語と教育」の分野での出題が予想できます。

例1)基礎試験

知識問題として教授法の変遷についての文章を読み、用語を答える問題

問題例:

「フォーカス・オン・フォームに分類される教授法は次のうちどれか。


1.TBLT

2.CALP

3.VT法

4.TPR

正解:1

CALPは「学習言語能力」、TPRは「全身反応教授法」「VT法」は体のリズム運動を通してリズムやイントネーションを学習する音声指導法。
頭文字を取った用語は頻出ですので何の略だったか思い出せるようにしておきましょう。

例2)応用試験

教師と学生のやりとりや授業例を見て「このような指導法は何と呼ばれるか」「TBLTのタスク活動として適切なものはどれか」などの手法の理解を問う問題。

問題例1: TBLTの手法を取り入れた「タスク活動」として最も適切なものはどれか。

 

1.教科書の会話文をペアで役割交代しながら、イントネーションに気をつけて何度も音読する。

2.学習した文型を使って、過去の経験についての文を5つノートに書く。

3.2人の学習者が異なる旅行会社のパンフレット(情報)を持ち寄り、お互いの条件に合う最適な旅行プランを1つに決定する。

4.日本語の曲の歌詞を聞き取り、空欄になっている助詞を正確に書き取る。

正解:3

「日本語を使って相手と一緒に計画を立てる」という実際のコミュニケーションを意識したタスク活動です。

問題例2:  TBLTにおける考え方として適切なものはどれか。

 

1.文法を正確に模倣・暗記することで、コミュニケーション能力を身につけるものである。

2.意味のある文脈で言語を実際に使用する過程を通じて、言語習得が促進される。

3.学習者の母語と言語構造を比較分析し、干渉の起こりやすい部分を重点的に訓練する。

4.「理解可能なアウトプット」の考え方に基づき、相手が理解できるレベルの文法のみを扱う。

正解:2

TBLTでは使用場面や社会的な文脈を重視します。

 

まとめ

今回はTBLTについて解説しました。
これまでの指導法に加え、コミュニケーションを重視する学習法は業界でも注目が高まっていますので、登録日本語教員を目指すみなさんにも是非覚えて実践に生かしていただきたい内容です。

TCJの試験対策講座では、日本語教員試験合格に役立つ内容をお届けしています。今回ご紹介したような日本語教授法に関わる用語や概念を、具体例や出題例とともにわかりやすく解説しています。独学での合格を目指したいけど進め方や教材に迷っているという方はぜひTCJの合格パックをご検討ください!

\お得な期間限定キャンペーン実施中!短期合格を目指す方は今すぐチェック/

日本語教員試験対策は「合格パック」詳細はこちら
日本語教員試験対策を体系的に学びたい方へ

TCJの試験対策講座では、音声学や聴解問題など独学では理解しにくい分野も体系的に学ぶことができます。

日本語教師として自信をもって活躍するために、ぜひ講座内容をチェックしてみてください。
この記事の執筆者 TCJ日本語講座 非常勤講師

大野 綾香

大学で日本語教育を学んだのち、日本語教育能力試験に合格。日本語学校で留学生の大学受験指導・プライベートレッスン、教材出版等を経験後、2023年よりTCJにて留学コース・ビジネスパーソンのプライベートレッスンを担当。好きな分野は地域日本語教育、音声学。

一覧に戻る